1. なぜ、今「リーダーの役割の高度化」が問われているのか
リーダーの役割は、かつてとは比べものにならないほど高度化しています。
その背景にあるのは、VUCA(ブーカ)と呼ばれる時代への突入です。
VUCAとは、不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)という現代の特徴を表しています。
社会、経済、テクノロジー、価値観のすべてが流動化し、予測不可能になっています。
1年前に通用した戦略が、翌年には通用しなくなる。そんな世界に私たちは生きています。
こうした中、従来のリーダー像 - つまり、「過去の経験と正解を持っている人」が上に立ち、組織を牽引する - というスタイルは限界を迎えました。
リーダー自身も、かつて経験したことのない領域で意思決定を求められるようになったからです。
では、リーダーも「正解がないから決断しなくてよい」のかといえば、そうではありません。
むしろ、正解がないからこそ、リーダーは「決断する責任」を持ち続けなければならないのです。
しかも、もはや個人のカリスマ性や勘だけに頼ることはできません。
多様な視点を集め、複眼的に状況を把握し、仮説を立てて、最善の決断を導き出す。
この知的戦略行動こそが、今のリーダーに求められている姿です。
最終的な意思決定とその結果への責任は、リーダー自身が負う。
この「決断する責任」と「多様性を活かす知性」の両立が、リーダーの役割を飛躍的に高度化させているのです。
2. 「個」を活かすことがリーダーの本質的な役割へと進化した
現代において、リーダーには単に組織をまとめるだけではなく、個を理解し、活かし、組織成果につなげる力が求められています。
「このメンバー(部下)は何を強みとして持ち、どのような場面で活躍できるのか」という問いに、リーダーは正面から向き合わなければなりません。
強みとは、単なる「得意なこと」ではありません。
それは、本人にとって自然で、無理なく続けられ、かつ、内的な充実感を伴う特性のことです。誰にも負けない能力を「強み」と言います。
しかし、本人にとって自然すぎるため、自覚されにくいのが強みの特徴でもあります。
強みを発見するには、本人へのフィードバック、行動観察、科学的な適性診断などを組み合わせることが必要です。
5Dプロファイル診断では、性格特性、感情特性、思考特性、仕事観特性、行動特性という5つの視点から、個人の持つ資質を多面的に可視化します。
たとえば、外向性が高いが協調性が低い社員がいれば、発言力はあるが独断的な傾向があるかもしれない。
協調性が高くネガティブ感情も高い社員なら、周囲への配慮はできるが自己主張が弱いかもしれない。
このように、立体的に「その人らしさ」を把握することで、リーダーは初めて個の強みを戦略的に活かすことができるのです。
発見した強みは、チーム力の戦略立案や業務配分に活かします。
単に苦手を矯正するのではなく、強みを最大化する場面を意図的に設計すること。
これが、強い組織づくりの鍵です。
リーダーは、個を理解するだけではありません。
個を活かす設計者になることが、今求められているのです。
3. 議論ではなく「意見交換」へ:多様性の時代のコミュニケーション
組織における多様性が進む中で、コミュニケーションの質が組織力を決定づけます。
しかし、従来型の「議論中心」のスタイルは、もはや機能しなくなっています。
議論とは、正解を導くために、相手を論破することを目的とした言語戦です。
特にアメリカでは、かつてディベート文化が社会全体を支配していました。
論理力と雄弁さで相手を言い負かすことが、教育でもビジネスでも重視されてきたのです。
しかし、ダイバーシティ推進が本格化した1990年代後半以降、アメリカでもディベート型コミュニケーションが限界を迎えました。
ディベートは、言葉で相手を打ち負かす道具です。
論破された側には敗北感と疎外感が残ります。
多様な人材を活かすためには、むしろ逆効果であることが明らかになりました。
この反省から、アメリカでも「意見交換」という新たなスタイルへ方向転換してきました。
意見交換とは、相手を変えるのではなく、互いの視点を広げるための対話です。
リーダーには、この意見交換の場を設計し、促進する力が求められています。
勝ち負けではなく、違いを尊重しながら、より良い未来を共に考える組織文化を醸成すること。
これこそが、これからのチームに必要なコミュニケーションです。
4. リーダーは、戦略と人をつなぐ存在にならなければならない
リーダーの役割が高度化している理由は、単に環境変化に対応するためだけではありません。
組織が未来に向けて持続可能な成長を実現するために、リーダーが果たすべき新しい使命が生まれているからです。
近年では、企業の経営において「サステナビリティ(持続可能性)」が重要視されています。
しかし、それだけでは不十分です。
企業には、持続可能でありながら、なおかつ経済的な成長を遂げる戦略が求められています。
この二重の要求に応えるために、リーダーは、単に現場を管理するだけでなく、
経営戦略と人材開発を同時に結びつける存在でなければならなくなっています。
戦略を理解し、現場にただ落とし込むだけでは不十分です。
チームの個々の強みや志向性を理解し、それを組織目標に接続する設計力が不可欠です。
一人ひとりの強みを見極め、どう組織の成果につなげるのか。
それを実行できるリーダーが、これからの時代に必要とされるリーダーなのです。
リーダーは、戦略の翻訳者ではなく、戦略と個を統合して未来を創る設計者に進化する必要があります。
5. タレントマネジメントとは何か? なぜ今、導入すべきなのか?
こうしたリーダーシップの進化に欠かせない考え方が、タレントマネジメントです。
タレントマネジメントとは、単なるハイパフォーマーの囲い込みではありません。
すべての社員の持つ強み、成長可能性、志向性を可視化し、
それを組織戦略に沿って活かしていく戦略的人材活用の思想です。
5Dプロファイル診断は、このタレントマネジメントを実践する上で、極めて重要なツールとなります。 5Dプロファイル診断では、
- 性格特性(誠実性、協調性、情緒安定性など)
- 感情特性(ポジティブ感情、ネガティブ感情)
- 思考特性(ポジティブ思考、論理思考、創造思考など)
- 仕事観特性(達成志向、貢献志向など)
- 行動特性(具体的な71種の行動傾向)
という5つの次元から、個人の特性を立体的に把握することができます。
そうすると、
- どのような環境で強みが最大化するか
- どのような関わり方でモチベーションが上がるか
- どのような場面でパフォーマンスが落ちやすいか
といった情報が明確になります。
こうしたデータをもとに、リーダーは、単なる直感や経験に頼らず、
科学的根拠に基づいた人材マネジメントができるようになるのです。
タレントマネジメントは、人事部門だけが担うものではありません。
リーダー一人ひとりが、自分のチームで、日常的に実践することが求められています。
個を活かし、組織を成長させるための戦略的行動。
それが、本来のタレントマネジメントなのです。
※ タレントマネジメントの考え方については、 タレントマネジメントは人材マネジメントV3 で詳しく説明しています。
6. 結論:リーダーとは「決断する責任」と「個を活かす設計力」の融合体です
VUCA時代において、リーダーとは、単に管理する人ではありません。
正解が見えない中で、仮説を立て、情報を集め、意見を交換し、最終的に決断を下す人です。
その過程では、メンバー一人ひとりの強みを理解し、
適材適所に配置し、力を発揮できる環境をつくる設計力が不可欠です。
リーダーは、組織の未来に責任を持つ存在です。
戦略と人材を統合し、チームを導き、組織の進化を促す存在です。
リーダーの役割は確実に高度化しました。
しかし、それは新たな重荷ではありません。
リーダーが人と組織の可能性を最大限に引き出し、
未来を切り拓くクリエイティブな存在へと進化したということなのです。