近年、多くの企業が「タレントマネジメント・システム(制度)」を導入し始めています。
しかし、その導入目的を理解し、その意味を理解し、適切な運用管理をしている人は意外と少ないのではないでしょうか?
「人材管理」と何が違うのか、なぜ今、注目されているのかを明確にすることが、タレントマネジメントを効果的に活用する第一歩となります。
まずは、「タレントマネジメントとは何か?」を理解し、その目的を整理してみます。
さらに、従来の人材管理と比較することで、タレントマネジメントの本質をより明確にしていきます。
確かに最初は人材管理でしたが、時代の変化や人の価値観の変化に応じて必要とされる仕組みも進化を繰り返してきました。
ここで注意しておきたいことは、コンピューターのシステムを導入することが目的ではありません。タレントマネジメントの制度についての理解を深めることを目的とします。
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、「個々の才能(タレント=強み)を最大限に活かし、事業戦略を実現させるための組織と個人の人材戦略」を意味します。
旧来の人材管理では、主に「人員の確保・配置・評価」を重視してきました。
しかし、タレントマネジメントは単なる人材管理ではなく、「一人ひとりの強みを活かし、組織全体の成果を最大化する」ことが目的です。
タレントマネジメントの主要な目的とは、
- 適所適財の実現:個の強みやスキル・適性に基づき、最もパフォーマンスを発揮できるポジションに配置する。組織戦略を実現させる。
- 人材の可視化:適性診断やスキルマップを活用し、組織内のタレントを把握する人財戦略を実現させる。
- キャリア開発の支援:個の成長を促進し、長期的な企業の競争力を高める。人財投資戦略を実現させる。
- エンゲージメントの向上:従業員のエンゲージメントを開発・維持し、組織の活性化につなげる
- 多様性を活かしたチーム力の強化:性格、思考、価値観の異なるメンバーでイノベーションを創出する
従来の人材管理との違い
これまで多くの企業では「人材管理」という形で、従業員の採用・配置・評価・育成を行ってきました。
しかし、「人材管理」と「タレントマネジメント」は同じものではありません。
タレントマネジメントを効果的に導入するには、従来の人材管理との違いを理解し、なぜ、この新しい考え方が必要なのか? を明確にすることが重要です。
ここでは、それぞれの違いを比較しながら、タレントマネジメントの特長を掘り下げていきます。
| 従来の人材管理 | タレントマネジメント | |
|---|---|---|
| 目的 | 労務管理と人員配置、人事評価 | 人材の強みの活用とそのチーム作り=事業戦略の実現 |
| 視点 | 会社視点のみ(企業都合優先の配置) | 個人の視点と会社の視点(適性考慮の配置) |
| 評価方法 | 過去の実績重視(実績の積み上げ) | 複合型評価(成果+能力+アルファ) |
| 人材育成 | 画一的な研修・昇進制度 | 個々の強みに応じたキャリア開発 |
| データ活用 | 勤怠・成果・評価データ中心 | 適性診断・エンゲージメント分析など |
タレントマネジメントの本質は、「人を管理する」のではなく、「人を活かす」ことにあります。
これを理解することで、企業は持続的に成長し、従業員も自身のキャリアをより主体的に築くことができるようになります。
人材マネジメントの歴史と進化(V1 → V2 → V3)
人材マネジメントは、時代の変化に応じて進化してきました。
その歴史を振り返ると、以下のような段階を経てきたことがわかります。
タレントマネジメントの歴史
- 【V1】終身雇用と年功序列の時代(管理型人材マネジメント)
- 【V2】成果主義・実力主義の時代(評価型人材マネジメント)
- 【V3】タレントマネジメントの時代(戦略実現の最適配置型人財マネジメント)
なぜ今タレントマネジメントが必要なのか?
タレントマネジメントが必要な主な理由は、以下のような要因が挙げられます。
- 環境変化(人材不足・スキル変化・働き方の多様化)
- 企業の競争力=「個の強みを活かせるか」
- 管理する時代から、活かす時代へ
個の強みを発見し、引き出し、活かせるか?
1. 強みとは何か?
「強み」とは、単に得意なことを指すだけではありません。
努力しなくても自然にできること、行動しているときにエネルギーを感じること、周囲から「すごい」と言われるが本人には当たり前に感じるもの――こうした自分の内側にある「本質的な資質」を指します。
多くの人は、自分の強みに無自覚です。なぜなら、強みは本人にとって自然すぎて「特別」とは感じにくいからです。
だからこそ、自らの強みに気づき、それを意識して育てることが重要になります。
2. 強みを発見し、引き出すとはどういうことか?
強みを発見するためには、単なる自己分析では不十分です。
他者からのフィードバック、多面的な適性診断、日常の行動の振り返りを通じて、自分では気づかない強みを客観的に把握することが必要です。
そして、発見しただけで終わらせず、
- 日常業務で意識的に使う
- 成功体験を積み重ねる
- 強みを活かす場面を増やす
ことで、強みを「使える力」に引き出していきます。
強みは、認識し、意図的に使い続けることで、初めて磨かれ、確信に変わります。
3. なぜ強みを活かすことが重要なのか?
人は、自分の強みが認められ、活かされていると感じたとき、
- 自信が高まり
- モチベーションが自然に湧き
- 周囲への貢献意欲が高まります。
これが、エンゲージメント(主体的貢献意欲)の根源です。
逆に、強みを活かせず、苦手を矯正される環境では、自己肯定感が損なわれ、パフォーマンスも低下します。
強みを活かすことは、エンゲージメントを高め、個人と組織双方を成長させる力を持っています。
4. 強み活用がエンゲージメント向上に直結する理由
エンゲージメントとは、単なる満足度や幸福感ではありません。
組織やチームに対して、「自分の力で貢献したい」という前向きなエネルギーを指します。
強みを活かしている人は、
- 自分の役割に意味を感じ
- 自分らしく成果を出す実感を持ち
- 仲間と協働する中で自信を深めていきます。
このプロセスが、エンゲージメントを自然に押し上げます。
強みを活かすことこそが、持続的にエンゲージメントを高める最も確実な道なのです。エンゲージメントには2種類あります。従業員エンゲージメントと組織エンゲージメントです。
組織エンゲージメントは、外発的動機付けと言われて働く環境や経営理念、マネジメントやコミュニケーションなど確認しやすいので改善も比較的楽です。
一方、従業員エンゲージメントは、内発的動機づけと言われ本人の性格ややる気、チャレンジ精神など心理的、内面的なので改善は難しいです。
内面的な範囲には、性格特性や感情面、思考特性、特に、仕事観特性の大きく影響されます。
5. 強みを活かす組織とは?
強みを活かす組織とは、
- 一人ひとりの特性を理解し
- 適切な役割・環境を与え
- 成果だけでなく、強み発揮のプロセスにも注目し
- 互いの強みを掛け合わせる文化を育てる
そんな組織です。
そこでは、苦手なことを責めるのではなく、強みを組み合わせて、補完し合い、チーム全体の力を最大化します。
結果として、心理的安全性が高まり、イノベーションが生まれ、変化への適応力も高まります。
6. 具体的な取り組み例
強みを活かし、エンゲージメントを高めるためには、意図的な取り組みが必要です。
たとえば:
- 適性診断による強みの可視化
- 1on1ミーティングでの強み中心の対話
- プロジェクトアサイン時の強み考慮
- 強みを称賛しあう文化づくり
- 強みを活かした成長計画の策定
これらの積み重ねが、個人の自信とチームの活力を育てます。
7. まとめ
強みを活かすことは、単なる自己満足ではありません。
それは、
- 自分を信じ
- 仲間を信じ
- 組織の未来を切り拓くための、
最も本質的なアプローチです。これらは、戦略を実現させるための必要条件だからです。
個の強みを活かし合える組織は、高いエンゲージメントを生み、高いパフォーマンスを維持し、持続的な成長を遂げることができます。
これからの人材マネジメントにおいて、「強みの活用」と「エンゲージメント向上」は、不可分のテーマなのです。
※ 個人の強みや適性をどのように可視化し、タレントマネジメントに活かすのかについては、
5Dプロファイル診断の解説ページをご覧ください。