新時代の適性検査とは何か

今の時代において、新しい適性診断に何が求められているのかを深く考えてみたいと思います。
特にVUCAの時代に入ってから、世界中の仕組みに変革が起こりました。VUCA時代の到来は、心理学にも大きなパラダイムシフトをもたらしています。 これまでの心理学では、検証対象者を集めて実験室での統制の取れた検証を繰り返しながら、統計的な信頼性や正確性を高めてきました。
しかし現代では、各自がスマホやウェアラブル端末を使用するエコロジカル・モーメンタリー・アセスメント(EMA)や、会社や組織においては、 社内チャットやメールなどの媒体から、リアルな従業員のストレス診断や感情診断、思考診断が実現できる時代になりました。
実験室から日常の現場へと心理学の実践が移行しつつある今、新たな適性診断のあり方が求められています。

また、従来の「因果関係(原因‐結果)の単線モデル」から、「複雑系モデル」への移行が進んでいます
これはVUCAの「複雑性」に対応するものであり、認知行動療法や精神分析に加えて、複雑適応系理論やネットワーク分析、組織内の関係分析へと対象が広がっています。
さらに、これまでの適性診断はすべて「個人」を対象としてきました。しかし現代では、チームや組織・会社、対外的関係性といったマクロな文脈を同時に視野に入れる 「システムズ・シンキング」へと移行しています
こうした時代にふさわしい新しい適性診断が求められているのです。
現在、世の中の多くの診断ツールは、前の世代のものや、それよりもさらに古いものも少なくありません。

くわしくは、コラム欄の適性検査の比較に、主要な適性検査を使用した分析結果を掲載しています。 ぜひ、参考になさってみてください。

新時代の適性検査とは何か?

社会や働き方が大きく変化する中で、適性検査も新しい時代を迎えています。 かつての適性検査は、「性格テスト」や「学力テスト」、「ストレステスト」などのように、個人の一部の特徴を特定の目的で測るものが主流でした。 しかし、近年に求められる適性検査は、単なる「一部の診断」ではなく、その人の本質的な特性を総合的に診断することができる時代に入っています。 たとえば、どんな強みを持っているか、その強みの背景として、どのような性格や思考、仕事観を持っているのかを、多面的・立体的に捉えることが必要な時代になりました。
すなわち、性格診断には、性格特性だけでは診断ができなくなったと言っても過言ではない時代です。 その理由は明解です。
まず、現代は変化が激しい時代です。私たちの価値観の変化や社会構造の変化、テクノロジーの劇的な進化などによって、予測が困難な時代です。また、 これまでの常識も変りました。日本企業では、年功序列や終身雇用、社宅や社員旅行と言った当たり前だったものがどんどんなくなっています。
これからは、変化に柔軟に対応できるか否かが、柔軟性や適合性が企業にも個人にも重要な課題の一つになりました。複雑性も加速しています。 グローバル化や多様性への対応、生成AI、オンライン会議、リモートワーク、デジタル化、ワークライフバランスなどはこの20年間に出てきておき、 これまで経験したことがないものばかりです。

時代が求める人材像を想像してみるだけでも、前世代の「求める人材像」と現在に必要な「求める人材像」はガラリと変ってしまいました。 たとえば、カリスマ的なリーダーシップからビジョン型やコーチ型リーダーシップに変り、また、心理的安全性を推進する能力やエンゲージメント能力などが求められる時代に変容しました。

なぜ、新しい適性診断が必要になったのか?

求める人材像が大きく変化した今、適性診断も大きく変る必要があります。 繰り返しになりますが、近年の変化には、グローバル化や多様性の受入れ、少子高齢化で必要な人材が採用されない、 また、定年延長や廃止により、年上部下と年下上司の組織化が拡大しています。 AIの拡大も加速し自動処理や自動運転も特別なものではなくなっています。
これらの変化は、企業の人材戦略や組織文化に大きな影響を与えています。 このような変化の激しい中で、企業も持続可能で経済的成長をするためには、人材こそが最大の重要資産、すなわち人財と認知される時代に変化しました。
人財の質が企業の競争力を決定する時代になったのです。
時代の変化に対応すべく「変化する力」や「個性を活かす力」が重視されるようになりました。 これまでの人材を使用する時代から、人財に投資する時代になったのです。 このような時代のニーズに応えるためには、適性検査も進化する必要があります。 さらに、個人の力だけで高い成果を出すことが難しくなり、チームとしての力が問われる時代になっています
そのため、チーム内の人間関係や信頼関係、そしてコミュニケーションの質が、これまで以上に重要視されるようになっています。
現在主流の適性診断では、個人の特性は分析されても、個人とチーム、あるいは個人と上司との関係性を体系的に診断する仕組みはほとんどありません
一部にはそうした分析も存在しますが、それらは断片的で、体系的なものとは言えません。
このような状況では、チーム力の向上がビジネスモデルやツールの導入に依存しがちであり、チームを構成する「個人」の理解が別扱いになってしまっています。
本来、チーム力とは、個々の特性がどう組み合わさり、相互作用するかによって生まれるものです。
個人の分析とチームの力をつなぐ視点が、今こそ求められています。

新しい適性診断が重視すること

単なる適性診断ではなく、「人財の強みを活かした、強いチーム作り」を目指す診断です。

旧型適性診断を今の時代に使用することによる危険とは何か?

現代は、環境変化が激しく、仕事の内容や求められる力が常に進化しています。 さらに多様性を受け入れそれを活かすインクルーシブリーダーシップという全く新しいリーダーシップも必須な能力となりました。これはほんの1例です。 心理的安全性の推進力やエンゲージメント能力など、これまでになかった能力を診断するのに、旧型の適性検査をそのまま使用したため、 以下のような危険が発生しました。

実際にあった有名な大手の診断テスト(旧型適性診断)による「人材ミスマッチ事例」

事例1:「心理的安全性を高める人材」が欲しかったのに、支配的な人を選抜

求めた人材像

しかし旧型診断では…

結果:旧型適性診断は、外向性や内向性を軸とする診断のため、支配的な人材を採用してしまい、チームの雰囲気が悪化した。

事例2:「多様な意見を尊重するリーダー」が欲しかったのに、独善的な人を選抜

求めた人材像

しかし旧型診断では…

結果:自分の意見を押し通す「ワンマン型リーダー」が選抜され、周りが人間関係で疲弊し、離職者が増加してしまった。

事例3:「人をやる気にさせ拡大戦略を実現させるリーダー」が欲しかったのに、自己中心型を採用

求めた人材像

しかし旧型診断では…

結果:周囲の要望や現状把握が不十分な判断をするため、それを補うような自己アピールに走る人材であった。チームの雰囲気は低下し逆効果になった。

事例4:「成長意欲が高く柔軟な人材」が欲しかったのに、指示待ち型人材を選んだ

求めた人材像

しかし旧型診断では…

結果:個人の興味のあることには積極的だが、それ以外には興味を示さず指示待ち型であることが早期に判明した。

まとめ

旧型の適性検査では、これからの時代に活躍できる人材を正しく見極めたり育成のアドバイスを出すことが難しいのです。

大手の適性テストの診断システムが1960年代前後が最も多く、その時代のアルゴリズム(特定の診断をする計算処理や判定処理)を採用しています。 適性検査だけでなく、職種検査も同様なものが多い。比較的新しい診断テストでも2000年前後であり、総合的な診断ができるものはほとんど存在しない。

新しい適性検査が必要な理由

繰り返しになりますが、

これからの適性検査は、単なる人材の選定や選別のツールではありません。 「人の可能性を開き、よりよい未来を築くための出発点」となるツールでなければなりません。