SHL職業適性検査は、1977年にイギリスで設立されたSHL(Saville and Holdsworth Ltd)社によって開発された診断ツールである。
おそらく世界で最も利用されいるツールでもある。
創設者のPeter SavilleとRoger Holdsworthは、産業組織心理学を専門とし、「職場でのパフォーマンスと個人特性の関連性」
を科学的に解明しようとした心理学者である。彼らは、従来の経験則や主観的判断による人材選抜の限界に疑問を持ち、
客観的かつ再現性の高い「職業能力と特性の測定ツール」を開発している。
SHLのテストは、当初は英国の大企業(金融・製造業など)での採用選考・配置に導入され、
その後、ヨーロッパ・アジア・北米へと拡大した。現在では100か国以上、言語対応も30以上に及び、
世界中で年間数百万人が受検している最も商用的に成功した適性検査の1つとされている。
日本では、日本SHL社から数種類の診断ツールが日本語で受検できる。
① 定義:SHL職業適性検査とは何か?
SHL職業適性検査とは、職務に必要な能力や性格的傾向、思考スタイル、行動の傾向性を予測するために開発された、標準化された心理測定ツールの総称である。
SHLが提供するツール群には複数の種類があり、代表的なものに以下がある。
- 能力テスト(Aptitude Test):数的推理、論理的推理、言語理解などの認知能力を測定する。
- 性格検査(OPQ:Occupational Personality Questionnaire):職場での性格傾向から行動特性を予測する。
- 状況判断テスト(SJT):業務における判断力や行動選好の傾向を評価する。
- モチベーションや価値観の傾向を把握する補助ツールも存在する。
これらの目的は、候補者と特定の職務との適合度(ジョブフィット)を客観的に評価することで、人材の選抜・配置・育成における判断の精度を高めることにある。 SHL社が提供するOPQは、1984年に開発された性格検査です。従来の職務経験や過去データではなく、適性判断による未来予測を提供している。
② 解説:SHL職業適性検査が注目されている背景
SHLの検査ツールが広く注目されている理由は、単なる性格傾向の可視化にとどまらず、業務遂行に関わる行動の傾向や職務適性を予測する点にある。
特に、科学的信頼性・実務への即時活用性・国際標準性という3つの観点で高く評価されている。
SHLは心理統計学に基づいた妥当性と信頼性の検証を、複数の国・業種で数十年にわたって実施している。
なかでもOPQ(性格検査)は、ビッグファイブ理論と行動科学を基盤に設計され、構成概念妥当性を有するツールとして国際学会で多くの研究報告がなされている。
SHLは、「行動特性=性格傾向 × 状況」という基本的な理解に基づいて設計されており、
採用や配置現場で即活用できるよう、数値化された標準スコアや偏差値、レーダーチャート等の形式で結果が提供される。
それにより、「この職務に向いているか」「どんな上司との相性が良いか」「育成ポイントは何か」といった実務上の判断が行いやすい。
現在、SHLのアセスメントはFortune 500企業のうち80%以上で導入されており、年間で数百万人が受検している。
また、IBM、GE、Nestlé、Unilever、アクセンチュア、P&G、HSBC、ソニー、日立など、データに基づく人材活用を重視する企業において広く活用されている。
多言語対応・文化適応版も整備されており、国際的な共通基準として運用可能な適性検査である。
③ 特徴(長所):SHL職業適性検査が評価される理由
SHLの検査には、他の適性検査と比べて以下のような特徴がある。
特徴の前提解説
多くの適性検査が「診断的(本人理解)」に留まるのに対し、SHLは「選抜」「配置」「評価」「育成」などの人事実務に直結するツールとして設計されている。
そのため、実務での意思決定をサポートする機能性と、心理測定学に基づく科学的妥当性の両立が最大の強みである。
主な特徴一覧
- 多様な能力を測定できる:数的処理力・論理的思考力・空間認識・言語能力などを個別に測定し、職種に応じた能力マッチングが可能。
- 性格面の職場適応傾向を可視化(OPQ):チーム協働、上司との関係、目標志向、変化への柔軟性など32の性格的傾向に基づいた行動特性をビジュアル化し、適性マップとして提供。
- 選抜・配置・育成の一貫活用が可能:採用(選考)から入社後の配置、育成指導、リーダーシップ開発、昇進判断まで、幅広い人材マネジメントに展開できる。
- AIや自動スコアリングによる迅速な対応:結果はリアルタイムで出力され、担当者の主観を排除した客観的判断が可能。
- 職務適合度やリスク傾向の予測:候補者が「どの職務に向いているか」「離職リスクが高いか」などの傾向予測にも活用できる。
④ 短所・課題:SHL職業適性検査の限界と懸念点
一方で、SHL職業適性検査にはいくつかの本質的な課題や制約が存在する。特に以下のような点に注意が必要である。
課題の前提解説
SHLは「測定データとしての品質が高い」ことは確かだが、その結果をどう解釈し、実務に落とし込むかという運用スキルが企業側に不足していると、誤用や過信につながる。
特に、診断結果の一部だけを都合よく用いる「スコア信仰」や、「職務の本質を無視した結果偏重の配置判断」は、典型的な誤用例である。
主な課題一覧
- 結果の読解には専門知識が必要:特にOPQは32特性のバランスで解釈するため、数値の上下だけで判断するのは危険。専門家の関与がないと誤読されやすい。
- 自己報告式の限界(反応歪曲):候補者が「よく見せよう」とする傾向が強いと、結果が歪むことがある。SHLはその補正ロジックを一部搭載しているが、万能ではない。
- 文化依存のリスク:英語圏・欧州圏の文化に設計された内容も多く、完全な日本語版でも、和訳による微妙なニュアンスのズレが出ることがある。
- 費用が高めで、中小企業には導入ハードルがある:高度なフィードバックレポートや診断運用を外部に依頼すると、コストがかかる。
- “万能の人材診断”ではない:SHLで中心的に用いられるOPQなどの性格検査は、「性格傾向」や「行動特性の予測」に特化しており、動機づけ、感情の深層構造、価値観、ライフ志向などの内面的領域は原則として測定対象外である。 ただし、SHLが提供する一部の補助的アセスメント(モチベーション測定や価値観インベントリなど)を併用することで、それらの傾向を把握することは可能であるが、別途のオプションとなる。
⑤ 結論:SHL職業適性検査
SHL職業適性検査、とくにOPQは、「職場における行動傾向の予測」に最適化された、世界的に広く使われているアセスメントツールである。
その目的は明確であり、業務において「どのように振る舞う傾向があるか」「チームや役割にフィットするか」を判断することである。
したがって、採用選考・管理職選抜・配置転換・後継者計画など、企業の人事意思決定において「即戦力としての行動のフィット感」を数値で可視化するという点においては、極めて有用である。
ただし、このツールには以下のような限界や誤解されやすい性質が存在する。
SHLは「行動傾向」を測定するが、「なぜその行動になるのか」は測定しない
SHLのOPQは、受検者がどのような行動パターンを職場で示しやすいかという傾向を可視化する。 しかし、その背後にある性格的動機、感情のパターン、思考の構造、価値観、ストレス反応、成長過程などについては何ら明らかにされない。 たとえば、「他者主導に従いやすい」というスコアが出たとしても、
- 自信がないから従っているのか?
- 人間関係を壊したくないからか?
- 成果重視で効率を求めているからか?
- そもそも強い信念がないからか?
このような動機や意味構造についてはOPQでは判断できないため、フィードバックの際に「なぜこのような行動傾向があるのか」といった内省支援や、育成的な活用には限界がある。
すなわち、診断結果による行動傾向のフィードバックは得られても、その背景にある個人の内面を理解し、成長支援につなげるためには別の補完的アプローチが必要である。
「行動プロファイル」と「実際の成果や能力」は別物である
OPQのスコアは、あくまで「~しがちである」「~に傾向がある」ことを統計的に予測するものであり、実際にその行動を取るかどうか、成果に結びつくかどうかまでは直接示さない。
たとえば「創造性が高い」という傾向が出ても、その人が創造的成果を出しているかどうかは全くの別問題である。
このように、予測モデルとして一定の妥当性はあるものの、「できそうに見える」ことと「実際にできる」ことのギャップが可視化されるわけではなく、現場での誤解を招くことがある。
性格心理学の分野では、「一般的で抽象的すぎる表現」は実証性が乏しく、実務での過信を招くとして避けるべきとされている。
SHLが示す「コンピテンシー」は、性格傾向(OPQの33特性)に基づいて推定された「行動の可能性」であり、あくまで「期待される行動傾向」として定義されている。
ただし、その内容は抽象度が高く、簡単には理解・運用できない。
SHL自身が公式に「SHL Universal Competency Framework(UCF)」というフレームワークを定義しており、
OPQの結果をこのコンピテンシーにマッピングする仕組みを提供している。
SHL Universal Competency Framework(UCF)の構造
UCFは、以下の3層構造で構成されています。
- 8つのコンピテンシー要因(General Competency Factors)
- 20のコンピテンシー次元(Competency Dimensions)
- 96の具体的なスキル(Skills)
まずは、順番通りに解説してみたいと思う。
最初に、8つのコンピテンシー要因名。
| 番号 | 8つのコンピテンシー要因名(英語) | 日本語訳 | 定義 |
|---|---|---|---|
| 1 | Leading and Deciding | リーダーシップと意思決定 | 他者に方向性を示し、意思決定を行い、責任を引き受ける姿勢。 |
| 2 | Supporting and Cooperating | 支援と協力 | 他者への共感・協力・支援を通じて良好な人間関係を築く力。 |
| 3 | Interacting and Presenting | 対人・発信 | 他者に影響を与え、効果的に情報を伝える能力。 |
| 4 | Analyzing and Interpreting | 分析と解釈 | 論理的思考を用いて情報を処理し、分析・解釈する能力。 |
| 5 | Creating and Conceptualizing | 創造と構想 | 新しいアイデアやコンセプトを生み出し、将来を計画する力。 |
| 6 | Organizing and Executing | 組織化と実行 | タスクを計画し、リソースを管理し、効率的に業務を遂行する力。 |
| 7 | Adapting and Coping | 適応と対処 | ストレス・変化・困難な状況に柔軟かつ効果的に対処する能力。 |
| 8 | Enterprising and Performing | 挑戦と成果志向 | 野心的に挑戦し、目標達成に向けて努力し成果を出す姿勢。 |
20のコンピテンシー次元は、全8の領域に分けて整理してみた。
| 20のコンピテンシー次元 | 定義 |
|---|---|
| 1.1 意思決定と行動の開始 | 自信を持って行動を起こし、責任を持って意思決定を行う。 |
| 1.2 リーダーシップと監督 | 他者を導き、目標達成に向けてチームを効果的に指導する。 |
| 2.1 人との協働 | 他者と協力し、良好な人間関係を築く。 |
| 2.2 原則と価値の遵守 | 倫理的な基準を守り、組織の価値観に従う。 |
| 3.1 関係構築とネットワーキング | 他者との関係を築き、維持する。 |
| 3.2 説得と影響力 | 他者を説得し、影響を与える。 |
| 3.3 情報の提示とコミュニケーション | 情報を明確に伝え、効果的にコミュニケーションを行う。 |
| 4.1 文書作成と報告 | 情報を整理し、明確な文書や報告を作成する。 |
| 4.2 専門知識と技術の応用 | 専門的な知識や技術を実務に応用する。 |
| 4.3 分析 | 情報を分析し、問題解決に活用する。 |
| 5.1 学習と調査 | 新しい知識を習得し、情報を調査する。 |
| 5.2 創造と革新 | 新しいアイデアを生み出し、革新的なアプローチを取る。 |
| 5.3 戦略と概念の形成 | 戦略的な思考を行い、概念を形成する。 |
| 6.1 計画と組織化 | 目標達成のために計画を立て、リソースを効果的に配置する。 |
| 6.2 結果の達成と顧客期待の満足 | 目標を達成し、顧客の期待に応える。 |
| 6.3 指示と手順の遵守 | 指示や手順に従い、業務を遂行する。 |
| 7.1 変化への適応と対応 | 変化する状況に柔軟に対応し、適応する。 |
| 7.2 プレッシャーと挫折への対処 | ストレスや困難な状況に効果的に対処する。 |
| 8.1 個人の仕事目標と目的の達成 | 個人の目標を設定し、達成に向けて努力する。 |
| 8.2 起業家精神と商業的思考 | ビジネスチャンスを見出し、商業的な視点で行動する。 |
3番目は、96の具体的なスキル(Skills)である。その一部を提示する。
| コンピテンシー要因 | コンピテンシー次元 | 具体的なスキル |
|---|---|---|
| Leading and Deciding | Deciding and Initiating Action | 意思決定を迅速に行う |
| 困難な決定を下す | ||
| 役割と責任を定義する | ||
| 他者を動機づけ、権限を与える | ||
| リーダーシップを発揮する | ||
| 責任を引き受ける | ||
| Leading and Supervising | チームを指導する | |
| パフォーマンスを監視する | ||
| フィードバックを提供する | ||
| 目標を設定する | ||
| 進捗を追跡する | ||
| 成果を評価する | ||
| Supporting and Co-operating | Working with People | 他者を理解する |
| 多様性を奨励する | ||
| 倫理的に行動する | ||
| 信頼を築く | ||
| チームワークを促進する | ||
| 協力的な関係を維持する | ||
| Adhering to Principles and Values | 組織の価値観に従う | |
| 誠実さを示す | ||
| 倫理的な判断を行う | ||
| 責任を持つ | ||
| 透明性を保つ | ||
| 公正に行動する | ||
| Interacting and Presenting | Relating and Networking | 関係を築く |
| ネットワークを拡大する | ||
| 他者と効果的に交流する | ||
| 協力関係を構築する | ||
| 信頼関係を育む | ||
| 対人関係を管理する | ||
| Persuading and Influencing | 説得力を持つ | |
| 影響力を行使する | ||
| 交渉を行う | ||
| 意見を主張する | ||
| 他者を巻き込む | ||
| コンセンサスを得る | ||
| Analysing and Interpreting | Writing and Reporting | 文書を作成する |
| 報告書をまとめる | ||
| 情報を整理する | ||
| 明確に伝える | ||
| 適切な文体を使用する | ||
| 読者に合わせる | ||
| Applying Expertise and Technology | 専門知識を活用する | |
| 技術を適用する | ||
| 新しい技術を学ぶ | ||
| ツールを効果的に使用する | ||
| 技術的な問題を解決する | ||
| 技術的な知識を共有する | ||
| Creating and Conceptualising | Learning and Researching | 新しい情報を学ぶ |
| 研究を行う | ||
| 知識を拡張する | ||
| 情報を分析する | ||
| 学習機会を探す | ||
| 継続的に学ぶ | ||
| Creating and Innovating | 新しいアイデアを生み出す | |
| 革新的な解決策を提案する | ||
| 創造的に考える | ||
| 改善を追求する | ||
| 変化を促進する | ||
| 柔軟に対応する | ||
| Organising and Executing | Planning and Organising | 計画を立てる |
| タスクを整理する | ||
| 優先順位を設定する | ||
| リソースを管理する | ||
| 進捗を監視する | ||
| 期限を守る | ||
| Delivering Results and Meeting Customer Expectations | 結果を出す | |
| 顧客の期待に応える | ||
| 品質を維持する | ||
| 効率的に作業する | ||
| フィードバックを活用する | ||
| サービスを向上させる | ||
| Adapting and Coping | Adapting and Responding to Change | 変化に適応する |
| 柔軟に対応する | ||
| 新しい状況に対応する | ||
| 変化を受け入れる | ||
| 新しい方法を試す | ||
| 変化を管理する | ||
| Coping with Pressures and Setbacks | プレッシャーに対処する | |
| ストレスを管理する | ||
| 失敗から学ぶ | ||
| 回復力を持つ | ||
| 批判に対処する | ||
| 困難を乗り越える |
最後は、性格傾向(OPQの33特性)で定義した行動コンピテンシーの定義を紹介しよう。
| SHLの性格特性(OPQ) | 対応するコンピテンシー(行動) | 該当コンピテンシーフレームワーク領域 |
|---|---|---|
| 社会的大胆さ(Social Boldness) | プレゼン力、対人影響力 | Interacting and Presenting |
| 創造性(Innovative) | 問題解決力、革新志向 | Creating and Conceptualizing |
| 頑固さ(Conventional) | 柔軟性の低さ(改善対象) | Adapting and Coping |
| 忍耐強さ(Relaxed vs Tense) | ストレス耐性、情緒の安定性 | Coping with Pressures and Setbacks |
| 社交性(Outgoing) | チーム内の調和づくり、協調性 | Interacting and Presenting |
| 自信(Confidence) | 意思決定力、自立性 | Leading and Deciding |
| 競争心(Competitive) | 達成志向、自己主張 | Achieving and Doing |
| 責任感(Conscientious) | 自己管理、規律のある行動 | Supporting and Cooperating |
| 分析性(Analyzing) | 論理的思考、データ解釈 | Analyzing and Interpreting |
| 慎重性(Cautious) | リスク管理、事前準備 | Adapting and Coping |
| 外向性(Extraverted) | 対人関係構築、チーム推進 | Interacting and Presenting |
| 内向性(Introverted) | 集中力、観察力 | Analyzing and Interpreting |
| 他者志向性(Altruistic) | 支援意欲、奉仕性 | Supporting and Cooperating |
| 支配欲(Controlling) | リーダーシップ、方針設定 | Leading and Deciding |
| 現実主義(Pragmatic) | 計画遂行力、手堅さ | Organizing and Executing |
| 想像力(Imaginative) | ビジョン創出、構想力 | Creating and Conceptualizing |
| 柔軟性(Flexible) | 変化対応、臨機応変な判断 | Adapting and Coping |
| 目標志向(Goal Focused) | 達成への粘り強さ、集中 | Achieving and Doing |
| 意志の強さ(Determined) | 困難突破力、継続力 | Coping with Pressures and Setbacks |
| 誠実さ(Honest) | 倫理観、信頼構築 | Supporting and Cooperating |
| 楽観性(Optimistic) | ポジティブな影響力、挑戦志向 | Adapting and Coping |
| 慎み深さ(Modest) | 自己抑制、裏方的貢献 | Supporting and Cooperating |
| 理論志向(Theoretical) | 抽象思考、構造化力 | Creating and Conceptualizing |
| 実行力(Action Oriented) | すぐに行動に移す力 | Organizing and Executing |
| 変化志向(Change-Oriented) | 改革推進力、改善志向 | Creating and Conceptualizing |
| 計画性(Planning) | 段取り力、スケジューリング | Organizing and Executing |
| 多様性志向(Tolerance) | 文化受容力、差異理解 | Supporting and Cooperating |
| リスク回避傾向(Risk Avoidance) | 安定志向、安全配慮 | Adapting and Coping |
| 権威志向(Authority Respect) | 上司への服従、規範遵守 | Supporting and Cooperating |
| 探求性(Curiosity) | 新しいことへの関心、学習意欲 | Creating and Conceptualizing |
| 主張性(Assertive) | 自分の意見を伝える力 | Interacting and Presenting |
| 緻密性(Detail Consciousness) | 注意深さ、抜け漏れ防止 | Organizing and Executing |
| 持続性(Persistence) | 困難に粘り強く取り組む力 | Coping with Pressures and Setbacks |
現代の変化の早い時代において、SHLは個人の成長支援・変容設計には使えない
その理由は簡単で明確である。
SHLは「静的な傾向の測定」であり、「この人がどう成長できるか」「どのような支援が有効か」というような成長支援のプロファイル構築がない。
行動傾向を定義づけてはいるが、
行動傾向は定義されているが、その行動が生じる背景にある「why」――すなわち動機、思考、感情、仕事観などとの構造的関係については、SHLの中核的なツールであるOPQやUCFでは明示されていない。
SHL全体として補助的資料や理論背景は存在するものの、「なぜその行動が起こるか」という因果的・構造的な説明は体系的には提示されていない。
人材開発に必要な「自己理解」「行動の見直し」「変容の道筋」などを支援する設計は主目的ではなく、
SHLの主な適用領域は「今のこの人が、現職務にどの程度適合しているか」というフィットの可視化にある。
つまり、現在のVUCAの時代においては、個人も組織も変化を前提に行動せざるを得ない。
このような変化の激しい環境において、個人の変化や成長を支援する仕組みとしては、SHLはそのままでは対応が難しい。
これは、現代の人材開発戦略における実務的な限界点でもある。
SHLは極めて実用的なツールであり、数値で行動傾向が示され、視覚的で導入もしやすい。
だが、「なぜその行動を取るのか」「どうすれば変えられるのか」「どう育てればいいのか」といった内面的要因へのアプローチや育成支援に関する情報は、
OPQやUCFの範囲ではほとんど提供されていない。
特に、SHLのコンピテンシー定義は性格傾向との統計的対応に基づくが、それが示す行動の背後にある動機や価値観は測定対象に含まれておらず、不明のままである。
たとえば、社会的大胆さ(Social Boldness)な性格特性の人は、なぜ、プレゼン力と対人影響力のコンピテンシーなのか?
すなわち、行動の「なぜ」に関わる内面的要因(動機・感情・思考構造など)への洞察が得られないため、育成指導や動機づけ支援には活用が難しい。
したがって、SHLは「現状の配置・選抜」には有効だが、「人を育てる・変える・支援する」といった内面重視のマネジメント支援には限界がある。 (以上は筆者の私見を含みます)