人と職務の適合性(ジョブフィット)を見極めるアセスメントとして、ProfileXT(PXT)は世界中で多くの実績を築いてきました。
人と職務の適合性を測定する戦略的人材アセスメントとして有名です。
性格(Personality)、認知能力(Thinking Style)、職務志向(Interests)を統合的に診断し、特定の職務モデルに対する「職務適合率」を数値化することが特徴です。
それを、「思考スタイル・認知能力」「行動特性」「仕事への興味」の3つの軸で20の指標を測定しています。
さらに、「思考スタイル」では、職務との適合度を評価する「言語的推論」「数的推論」「言語スキル」「計算能力」の4指標により、
IQ的思考スタイルをベースにした情報処理能力を測定しています。これは、従来の知能因子理論(Cattell-Horn-Carroll理論)に通じる構成をしています。
① 定義:ProfileXT診断ツールとは何か?
PXTとは、米国の人材アセスメント会社「Wiley(旧Profiles International)」が提供する、総合的な適性診断ツールです。 主に採用、配置、リーダー育成、後継者選定の目的で、性格・認知能力・職務適合性などの多角的な指標を測定します。 企業が人材と職務のマッチングをデータに基づいて判断できるよう設計された、高度な職務適合型のアセスメントです。
② 解説:PXT診断ツールが導入されている背景
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PXTは、次の3つの領域を総合的に診断します。
- 認知能力(Cognitive Reasoning):言語・数理・抽象推論力を測定
- 行動的傾向(Behavioral Traits):行動的性格特性として主導性、社交性など9因子で測定(ビッグファイブの一部を限定的に使用しアレンジしている)
- 職務興味(Occupational Interests):本人の興味・志向(サービス志向や創造性など)とホランドのRIASEC理論を独自にアレンジした職種のマッチングを測定、 さらに、企業側であらかじめ設定した職種カテゴリとのマッチングも可能です。
職務ベンチマーク(理想プロファイル)と受検者のスコアを比較し、職務適合性スコアを数値で可視化します。 受検時間は約60分で、Web上で実施可能です。診断後は、採用判断用レポートだけでなく、入社後の上司・本人向けの行動指針も自動で生成されます。
③ 特徴(長所):PXT診断ツールの評価される理由
- 職務モデルに基づく「適合率スコア」を提供:数値化されたJob Fit(例:82%適合)が出るため、採用や配置の説得力があります。
- 職務ベンチマークとの比較が可能:事前に理想の人物像(成功者プロファイル)を設定し、受検者と比較できるため、客観的な判断がしやすくなります。
- レポートが具体的かつ実務的:採用判断レポートに加えて、面接用質問例、マネジメント指針、本人フィードバックまでが整備されています。
- 診断結果の可視化が高度:行動特性ごとのズレや職務フィットの構造を一目で確認できます。
- グローバル対応:多言語や多文化に対応しているため、外資系企業・グローバル人材の診断に強みがあります。
④ 短所・課題:PXT診断ツールの抱える深刻な構造的問題
- 3つの異なる測定領域の信頼性係数を上げるための複合説明が複雑すぎる:適合率のクロンバック係数は適性業務の診断には不可欠です。 そのため、必要以上に類似質問を繰り返す質問構造に問題があります。四択/五択の客観問題、文章読解、数列補完など、計算や推論を必要とするため時間がかかります。 さらに、正解を求めない質問が80前後あります。これは、RIASEC系思考も含め、回答に迷います。そのため、問題数の割には必要以上に時間がかかります。
- 行動特性を診断するが100問:典型的なLikertスケール形式での質問なので慎重に回答する傾向が強くでてきます。回答の整合性も測っているので、 その結果が職務適合に直接的に影響します。
- 質問の翻訳に違和感がある:多言語対応はしているが、その翻訳には文化的・言語的背景が考慮されていない質問になっています。受検者もこれでは誠実に回答したいと思っていても 違和感の回答をすることになります。
- 職務モデルの範囲が古すぎる:職務定義は基本的に1950から60年をモデルとして進化し、現在のモデルは1990年代モデルのようです。近年の職業や職務は網羅されていません。 職務モデルの前提自体が古すぎる、現代的な職務の柔軟性や多様性に対応していない。という根本的な問題があります。 いくら適適合性があっても、近年の職務モデルがない事自体が欠陥です。データサイエンティスト、UXデザイナー、ゲームデザイナーなど数百以上の新規の職務がありますが、1つも含まれていません。
- 職務モデルが古く固定化している:2世代前の職務モデルで運用しているため、近年の職務モデルとの乖離(ギャップ)があります。 たとえば、営業職=社交性が高い&柔軟性は普通のロジックを使用しています。この診断には、職務内容の安定性、明確な指示構造、(米国標準の)できる人のみのキャリアパスの構造によるものです。 すなわち、米国で主流となったコンピテンシーモデルのハイパフォーマー分析が前提であり、構築に高度な統計処理と専門知識を組み込んだため、営業職の診断構造が決まりました。 しかし、VUCAの時代に入って、営業職に求められる特性は、顧客理解力と顧客志向、共感力と適応力、それに外向性です。構造が大きく変わりましたが、これに対応していません。
⑤ 結論:PXT診断ツール“職務診断”にすぎない
短所・課題に指摘した「質問の翻訳に違和感がある」では、日本語として不自然な表現や違和感のある文が多く見られた。
たとえば、I work best when goals are clearly defined. 「目標が明確に定義されているときに、最も良く働けます。」がある。この日本語の質問で12名の日本企業の課長職にヒアリングをとった結果、
質問の「最も良く働けます。」の理解が、「気分よく働ける」「ストレスが少なく働ける」「目的意識を持って働ける」であった。
質問の解釈がこれだけ異なれば、再現性は極めて低い。正確性も決して高くないように思える。
翻訳が適切でないこと、不自然な翻訳が多く散見されることは、おそらく機械翻訳であるか、または、日本の文化的背景を理解していない翻訳者による翻訳としか想像できない。
このような意味が不明、または、回答のポイントが分からない場合、適切な回答はできない。このような状態で診断することは、日本においては不可能である。
さらに、職務モデルが古すぎて近年の新規職務が含まれていない。ジョブ型を前提とした古典的な職務定義をしている。
VUCAの時代に出てきた新しい職種を追加しないと使用できないと感じた。(以上は筆者の私見を含みます)
⑥ 提案:ProfileXT診断ツールは「成長を促す診断」へと再設計されるべきである
PXTが価値ある診断とするためには、VUCAの時代に必要とされる職種モデルのベースの再設計が必要である。 これらはこの時代に必要な世界共通の代表的な職種の共通点である。
| 基礎となる特徴 | 職種モデルに必要な特性の解説 |
|---|---|
| 組織に属しながらも自律的である | 指示待ちではなく、変化の中で自分で動くことが求められる |
| 正解がない課題に取り組む | 前例がない・数値化できないテーマに仮説ベースで挑む |
| 領域横断的なスキル | IT × 組織 × 心理 × 法務など、複数領域の理解が前提になる |
| 常に「学び続ける姿勢」 | 知識や方法が陳腐化するスピードが早く、アップデートが必須 |
| データと感性の両立 | ロジックだけでなく、共感・人間理解も重視される |